ギコナビの画面からのコピペなので見辛いかもしれませんが、その辺はご了承ください。
212名前: 名無しんぼ@お腹いっぱい投稿日: 2008/01/09(水) 23:11:58 ID:JInQ3E/w0
全米の出版と本の業界ニュースサイトであるPublisher Weeklyに
なぜか、というか、なんと、というか。木尾先生の
長いインタビューが掲載されていました。
どうやらアメリカでもげんしけん全9巻が発売されたらしく、
日本のオタクを描いた作品と作者、というのが記者の興味をひいたみたいです。
荻上のキャラやエピソードは、ほぼ自分のことをモデルにしているなどの
興味深いエピソードを語ってます。
翻訳してみましたが5000字以上になってしまいました。
ちょっとずつ小分けにして載せてきます。
勢いで翻訳しているので間違ってたら訂正よろしくです。
■■■■インタビュー:「げんしけん:木尾士目と"オタク魂"」■■■
~PW Comic Week 2008年1月8日号~
http://www.publishersweekly.com/article/CA6517850.html?nid=2789
213 名前: 名無しんぼ@お腹いっぱい [sage] 投稿日: 2008/01/09(水) 23:15:17 ID:f6766EdN0
>>212
乙です!!!本当にありがとう
214名前: 名無しんぼ@お腹いっぱい投稿日: 2008/01/09(水) 23:22:45 ID:JInQ3E/w0
インタビュー:「げんしけん:木尾士目と"オタク魂"」(1)
~PW Comic Week 2008年1月8日号~
(前書き)
木尾士目氏は日本のオタクカルチャーを扱った愛すべきシリーズ
「げんしけん(=現代視覚文化研究会)」の作者。
全9巻は(米国では)Del Rey Mangaから刊行されている。
同作品はオタク(熱狂的なアニメとマンガのファンたち)が集まる
大学の視覚メディア系サークルでまわし読みされている。
彼らはそこに集まっては好きなアニメ、マンガ、ゲーム、
その他の関連したことに日夜妄想をめぐらしている。
日本ではげんしけんは2つのアニメシリーズになり、
そこからスピンオフしたマンガ作品として
"くじびきアンバランス"(同じくDel Rey Mangaから刊行)も登場した。
今回のメールによるインタビューで:オタクを自称する木尾氏は
PW Comics Weekに対してオタクについて解説してくれた。
また同人誌、オタク文化、あるいはコミケ(年に2回東京で開催される
巨大なコミックフェス・販売イベント)に対する質問にも答えてくれた。
通訳にたってくれた講談社に感謝します。
http://www.publishersweekly.com/article/CA6517850.html?nid=2789
215名前: 名無しんぼ@お腹いっぱい投稿日: 2008/01/09(水) 23:28:41 ID:JInQ3E/w0
インタビュー:「げんしけん:木尾士目と"オタク魂"」 (2)
~PW Comic Week 2008年1月8日号~
PW Comics Week:
日本語のオタクという言葉は、日本から発信され
今や世界中のマンガファンへと広がりましたが、
肝心の日本ではオタクという言葉は決して良い響きではないようです。
オタクがGeek(パソオタ)みたいに
ある種の愛情をもって扱われている米国とは違い、
日本ではオタクでない者がオタクという言葉を使う時、
変質者とか異常者みたいな使われ方をされますね。
木尾さんがマンガに登場するオタクのキャラクターたちを描くにあたって
どんなことがヒントになっていますか?
木尾氏:
ぼく自身もオタクであり、登場人物がオタクであるのは
ある意味当然のことだと思っています。
この作品(げんしけん)のねらいは、オタクをふつうの人として
描くことにありました。
さっき言った通り、オタクのこの国での扱われ方は、
ある種、異様な生き物みたいなところがあります。
ぼくは、オタクを登場させながらも
普通のオタクじゃない人たちにも
理解できるマンガをやってみたかったんです。
216名前: 名無しんぼ@お腹いっぱい投稿日: 2008/01/09(水) 23:38:39 ID:JInQ3E/w0
インタビュー:「げんしけん:木尾士目と"オタク魂"」 (3)
~PW Comic Week 2008年1月8日号~
PW Comics Week:
いま、オタク文化あるいは現代視覚文化は、
どのくらいすごいものなんでしょうか?
木尾氏:
最初からすごく難しい質問で、
ぼくはそういうことについて考えたこともありません。
ぼくにとってオタク文化-現代視覚文化ですか-というものは
純粋に個人的な趣味で、誰かと共有できるようなものなく
個人に属する経験なんです。
セックスとも違い、別に他の誰かのことを考えたり、
コミュニケーションをとったりする必要さえありません。
ですから他人にある作品を積極的に勧めたり、
読者や視聴者に安易に喜びを与えるような作品を
提供するようなことは、恥ずかしい行為だととさえ思っているんです。
217名前: 名無しんぼ@お腹いっぱい投稿日: 2008/01/09(水) 23:45:40 ID:JInQ3E/w0
インタビュー:「げんしけん:木尾士目と"オタク魂"」 (4)
~PW Comic Week 2008年1月8日号~
PW Comics Week:
オタク文化は、げんしけんが始まってから何か変わりましたか?
木尾氏:
オタク文化の存在感というものが、一般社会や文化のなかで大きくなりました。
日本では"萌え" (おおまかに言うと、特定キャラや作品に対する
熱狂的な愛情みたいなもの)は普通の言葉になりました。
ぼくの好きだったオタク文化、ある意味ぼくそのものだったものが、
世間に広がっていってしまってちょっと悲しいです。
そんなわけで、さきほどのご質問についてぼくはあまり考えたくないのです。
http://www.publishersweekly.com/article/CA6517850.html?nid=2789
218名前: 名無しんぼ@お腹いっぱい投稿日: 2008/01/09(水) 23:47:37 ID:JInQ3E/w0
インタビュー:「げんしけん:木尾士目と"オタク魂"」 (5)
PW Comics Week:
ここまで(オタク文化が)世界に受け入れられたのはなぜだと思いますか?
木尾氏:
世界に広まっている、のは聞いたことがあります。
でもそれを実感するのは難しいことです。
疑ってさえいます。
むしろほんとうにそうなんですか、と逆にあなたに質問したいくらいです。
http://www.publishersweekly.com/article/CA6517850.html?nid=2789
219名前: 名無しんぼ@お腹いっぱい投稿日: 2008/01/09(水) 23:49:20 ID:JInQ3E/w0
インタビュー:「げんしけん:木尾士目と"オタク魂"」 (6)
PW Comics Week:
主要キャラである荻上(自己嫌悪を抱く若い女性の同人作家)が
自分がオタクであることについて恥ずかしいと感じるように、
日本では(オタクであること)は依然として
恥ずかしいことであるように思われますが。これは正しいですか?
木尾氏:
他の人のことはわかりませんが、ぼくは恥ずかしいと思っています。
理由はさきほど申し上げた通りです。
オタク文化に対する日本の世論に大きな影響を与えたものとして、
80年代の有名な連続殺人事件があります。
マスコミの報道は犯人はオタクであったと説明し、そこを強調しました。
こうしたイメージをぬぐい去るにはたいへん長い時間を必要としましたし、
いまだにメディアオタクを変質者的なテイストでもって異様な動物でも扱うように取り上げます。
"電車男ブーム"以降、(小説・マンガ・テレビ・映画にもなった
非常に有名な作品。オタクが生まれ変わって女性とデートするという内容)、
イメージはなんだか和らいだような気もします。
オタクの男をかわいいと考える風潮も生まれてきました。
でも笑い物であり不気味な奴であると考えられている事実は変わったわけではありません。
こうした環境のなかで、オタクであることを恥ずかしいと思わずに
生きていくのは難しいと思います。
http://www.publishersweekly.com/article/CA6517850.html?nid=2789
220名前: 名無しんぼ@お腹いっぱい投稿日: 2008/01/09(水) 23:51:47 ID:JInQ3E/w0
インタビュー:「げんしけん:木尾士目と"オタク魂"」 (6)
PW Comics Week:
その一方で、登場人物であるスーやアンジェラ
(アメリカからやってきた2人のオタク)は
自分たちがオタクであることを誇りに思っているようですが。
木尾氏:
スーとアンジェラは日本のそんな状況をほんとに知らないんです。
なので彼女たちはオタクであることに誇りを持てるんだと思います。
ぼくはアメリカに友人はいませんから、完全にぼくの想像の産物です。
http://www.publishersweekly.com/article/CA6517850.html?nid=2789
221名前: 名無しんぼ@お腹いっぱい投稿日: 2008/01/09(水) 23:54:58 ID:JInQ3E/w0
インタビュー:「げんしけん:木尾士目と"オタク魂"」 (8)
PW Comics Week:
げんしけんの初期のもっとも印象的なシーンとして、
みんなで最初にコミケ(Comic-Conのこと。ただしこちらは
有名マンガの二次創作物を販売するアマチュアの作家のためのもの)
へ行くエピソードがありました。
私もコミケには何度もいき、あなたの作品で描かれているように
始発電車に飛び乗り、アリアケを取り囲む行列に並んだりしたので
すごくリアルに感じました。木尾さんのコミケとの関わりを教えてください。
木尾氏:
コミケはオタクの欲望のるつぼみたいなものです。
あらゆるオタク文化がそこにあり、コミケにないものはオタク文化ではない、
とさえ言えると思います。
ぼくが初めてコミケに行ったのは、げんしけんの連載にゴーが出てからです。
読者というか消費者として行きました。
それまではほんとに行きたくなかったんです。
言葉をかえれば、行ったら何が起こるか自分でもよく分かっていたから。
行列に並び、大量のものを買いこむだろうなあと思っていました。
で、実際に行ってみると、もう完全に負けたって感じでした。
第6巻で、荻上がプンプン怒りながら買いあさるところから
転ぶところまで、あれはぜんぶ大なり小なり、ぼくの行動そのものです。
222名前: 名無しんぼ@お腹いっぱい投稿日: 2008/01/09(水) 23:57:23 ID:JInQ3E/w0
インタビュー:「げんしけん:木尾士目と"オタク魂"」 (9)
PW Comics Week:
荻上は、木尾さん、あるいは木尾さんの
経験をベースにしたキャラなんですか?
木尾氏:
おっしゃる通り、そう、だと思います。
多くはぼくやぼくの経験をベースにしています。
でもぼくはあそこまで風変わりではありませんし、
彼女のように誰かをモデルに描いて
傷つけてしまった経験もありません。
話を描き、それが世に出てしまった時、
それがどんな影響を与えてしまうかを
考えるように心がけています。
実際は、特定の人物をモデルにしたことはありません。
少なくともそんなことはしなかったと信じたいです。
http://www.publishersweekly.com/article/CA6517850.html?nid=2789
223名前: 名無しんぼ@お腹いっぱい投稿日: 2008/01/10(木) 00:00:15 ID:og8v0NEJ0
インタビュー:「げんしけん:木尾士目と"オタク魂"」 (10)
PW Comics Week:
コミケについて話を戻しますが、
同人誌はマンガ業界のなかでどんなポジションにありますか?
木尾氏:
同人誌にはたくさんのカタチがあると思います。
ひとつのものとして語るのは不可能です。
なのでぼくはある特定のスタイルの同人誌について
話していこうと思います。すでにある有名な作品のパロディを
扱った同人誌です。
このタイプの同人誌は基本的にはファンがつくった創作物であり、
パロディ&ファン同人誌がたくさん存在するというのは、
オリジナル作がどれだけ人気があるかの証明にもなっています。
有名マンガのパロディはどんどん有名になっていきます。
http://www.publishersweekly.com/article/CA6517850.html?nid=2789
224名前: 名無しんぼ@お腹いっぱい投稿日: 2008/01/10(木) 00:02:07 ID:JInQ3E/w0
インタビュー:「げんしけん:木尾士目と"オタク魂"」 (11)
木尾氏:
しかしこうしたパンロディタイプをやっている人たちは
商業誌でデビューすることを目的にやっているわけではありません。
ただ純粋にオリジナル作が好きだからやっています。
出版社の雑誌に掲載したいという意図もありません。
というか、法律的にそれは不可能です。
同人誌を自費出版する魅力は、
作者が自分のやりたいあらゆることを束縛なしできることです。
これは商業出版ではほぼ無理なことです。
商業誌でデビューしようとすると、作者は作品の構成(ネーム)を
つくって編集部に見せたり、公募に応募することになります。
でも編集側の視点でいくと、
どんな作品からでも作者のポテンシャルをはかることはできるわけで、
そういったわけで同人作家が
同人ではない作品を描くということもありえます。
225名前: 名無しんぼ@お腹いっぱい投稿日: 2008/01/10(木) 00:04:34 ID:JInQ3E/w0
インタビュー:「げんしけん:木尾士目と"オタク魂"」 (12)
PW Comics Week:
作中で荻上は自分の同人誌をはじめますね。
その後彼女はアフタヌーン(講談社から発行されているマンガ雑誌)の
作家になります。
これはインディーズ/ファンジンのアーティストが
プロフェッショナルに移行するケースが
日本ではもっと増えるということですか?
木尾氏:
同人作家の多くは、プロの漫画家にトライすることはあまりありません。
彼ら・彼女らは趣味で描き、
自分で出版することがただうれしいからです。
また彼ら・彼女らがプロをめざしたとしても、
その目標はゲームデザインだったり、
ラノベのイラストレーターだったりするかもしれません。
それに同人活動と関わりながらも
プロとして働くことは相互に二者択一なことではありません。
今後はプロのアーティストと同人アーティストを
明確に区別するのがどんどん難しくなっていくと思います。
オタクたちに名が知られているプロの作家のほとんどは
何らかのカタチで同人活動などに関わっています。
226名前: 名無しんぼ@お腹いっぱい投稿日: 2008/01/10(木) 00:07:19 ID:og8v0NEJ0
インタビュー:「げんしけん:木尾士目と"オタク魂"」 (13)
荻上が同人誌に関わった理由は、
彼女が自分の描いたものがもたらす影響や結果に、
ちゃんと向き合う覚悟ができたからです。
自分をつきうごかす世界を他人に見せる根性があるのか?
もしそうせざるをえないとして、そんな人生に耐えられることができるのか?
同人作家である以上、作品は間違いなく印刷され、
少なくともある程度の数の人々の目にさらされることになるでしょう。
荻上は何か伝えたいことがあり、
彼女にはそれを表現するための方法があります。
だから彼女にとってそれに関わっていくのは
しごく当然のことなのです。
また彼女の場合、やりたいことは単なるパロディだけではありませんでした。
伝えたいオリジナルの物語もあったのです。
彼女にとって同人とは全く異なるプロの作家になることは
より良い道であるとは言えません。
デビューをした後も、同人としてやりたいことができたなら、
彼女はおそらくそれをやるでしょう。
227名前: 名無しんぼ@お腹いっぱい投稿日: 2008/01/10(木) 00:10:24 ID:og8v0NEJ0
インタビュー:「げんしけん:木尾士目と"オタク魂"」 (14)
PW Comics Week:
Project G (マンガの付録になった同人誌)は
どなたがつくろうと決めたんですか?
木尾氏:
ぼくの編集者である村上さんです。
プランから作家さん選び、依頼、原稿集めまですべてやってくれました。
ぼく自身にはそんなことをできる神経はありません。
で、そうですね、すごく好評でしたし、よく売れました。
人々の話題にもなりました。
それについては村上さん、コメントよろしく。
228名前: 名無しんぼ@お腹いっぱい投稿日: 2008/01/10(木) 00:11:11 ID:og8v0NEJ0
インタビュー:「げんしけん:木尾士目と"オタク魂"」 (15)
村上氏:
本に付加価値をつけたり、新たなパッケージングで本を出すことが、
近年次第に一般的になってきています。
げんしけんで何かやろうかなと考えた時に、
これはやらなきゃいけないだろうと思いました。
ただ、商業ベースのキャラクター本のような本をつくるんじゃなく、
小冊子を付録にしたかったんです。
なので、ある意味オフィシャルな同人誌みたいなスタイルが
最も適しているんじゃないかと。
読者のみなさんの反応も好評でした。
アンソロジーではなく、
あくまでも、同人誌としてげんしけんの世界を描いたものなんです。
229名前: 名無しんぼ@お腹いっぱい投稿日: 2008/01/10(木) 00:14:51 ID:og8v0NEJ0
インタビュー:「げんしけん:木尾士目と"オタク魂"」 (16)
PW Comics Week:
げんしけんでは、木尾先生の描くキャラクターたちは
優しさ(ぬるさ、ゆるさ)に満ちていて、ストレートに正直ですね。
ファンの皆さんからはどんな反応がありましたか?
木尾氏:
ぼくとしては、オタク宣言だったり、
オタクであることの免罪符を得ようという意図は特になかったです。
自分ではオタクというものはマイノリティであるべきで、
世界のプレッシャーに耐えていくものだと信じてますし、
ぼくもそうなりたいと思っています。
230名前: 名無しんぼ@お腹いっぱい投稿日: 2008/01/10(木) 00:15:58 ID:og8v0NEJ0
インタビュー:「げんしけん:木尾士目と"オタク魂"」 (おわり)
木尾氏:
読者のみなさんからの反応はあえて見ないようにしています。臆病なもので。
もし誰かがぼくの作品にコメントしたとしたら、
ぼくはそれについて過度に考えてしまい、
本当にいいたいことが言えなくなってしまうでしょう。
だから距離を置いていたいんです。
いくつかの反応は確かにお聞きしますが、
すべての意見が決してそうとは限らない、と自分に言い聞かせています。
でも、うれしかったことがひとつありました。
それは、げんしけんに似たサークルを発足させた大学生たちが
いると聞いた時です。
みんなにはコミュニケーションする場所をもってもらいたいです。
Webじゃなく、現実の生活と現実の人間関係で。
ぼく自身が本当にそういうのがうらやましいものですから。
-------- おわり-----------------------------
http://www.publishersweekly.com/article/CA6517850.html?nid=2789
※長文どうもすみませんでしたー。
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